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お客様の旅日記

第2回:食べものに魅せられて おいしいものにあふれた1人旅

ペン イメージ画像 日比野光敏様

食べ物に魅せられて始まった1人旅

私はバンコク発着で、カンボジア・シェムリアップへのツアーに申し込みました。ツアーと言っても、メンバーは私ひとり。たったひとりの旅です。
シェムリアップは以前、友人たちと行ったことがあります。6日ほどかけて、アンコールワットやアンコールトムをはじめとする遺跡、トンレサップ湖などを訪ね、その魅力は十分堪能していました。ではなぜ再び、シェムリアップを訪れたのか。
それはその時出会った食べ物が非常に印象的だったからで、今回は食べることを目的にしたいと思っていたのです。ひとり旅だから、けっこう無理が利く。なにより、行程を自分の好きなようにアレンジしてもらえます。
決して「ゲテモノ食い」ではない私の、シェムリアップ・3泊4日。おいしいものであふれた旅をご紹介します。


▲アンコール・ナイトマーケット
平成24年3月6日 / シェムリアップ
まずはナイトマーケットで1杯!

夜、7時頃にシェムリアップに到着。車でホテルまで行く道中は真っ暗ですが、以前この地に来た7年前より、どことなく発展しているようでした。ホテルがどんどん建っていたせいでしょうか。
ガイドはポゥキィさん。パパになりたての若いお父さんで、料理もお得意とのこと。明日からの予定を決め、ホテルで彼と別れました。
さぁ、晩ご飯です。と言っても、レストランの予約がしてあるはずもありません。仕方なく,ホテルにほど近いアンコールナイトマーケットに出かけました。道中、たくさんのマッサージ屋さんから声をかけられましたが、こちとら男のひとり旅。丁寧に無視して(?)、目指すはナイトマーケット!
マーケットではシルクやコットン、銀製品、竹細工、陶器など、さまざまなものが並んでいます。どれもみな、財布のひもが緩くしそうですが、私は2回目のシェムリアップ。めぼしいモノはみんな前回の旅で買っていますし、だいたいが高い! ここらの店がどんなに安くしてくれても、街中のスーパーで買えばだいたい半値。しかもスーパーでは、値切る必要がありません。スーパー is great!

さて、おなかが空いたなぁ。どこの店に入ろうかなぁ。カンボジアの宮廷料理。ステーキの店もあるし、麺もある。こっちはイタリア料理だって。目移りがしますが、せっかくだからカンボジアの料理にしよう。
「カンボジア舞踊を見物しながら、最高のクメール料理を!」
そんな看板もあるが、元来、私は貧乏人。やっぱり地元の家庭料理っぽいものがいいですね。

▲「ビアホール」の鳥の串焼き
しかし、あちこち見るもどこがよいかサッパリわからず、結局はナイトマーケット内の中心で店を構えるビアホール(すみません。私のレポートには店の名前がありません。以後、「ビアホール」といったらここの店を指します)に決めました。

店と言ってもドアもないオープンな雰囲気で、カウンターの中では若いニィちゃん、いや青年たちが働いておりました。一見、「失敗したなぁ。ナイトマーケットって言えば観光地だぞ。料金、めちゃくちゃ高いんじゃないか?」と思いました。が、それは誤りでした。

まずは名物・アンコールビールを注文したのですが、これが1ジョッキー1ドル。80円くらいなのです。ちなみに、普通のお店で飲んだアンコールビールが2ドル、スーパーで買った350mlの缶ビールが1ドル弱でしたから、安いと言わざるを得ません。
実は私は、大のビール党。すっかりうれしくなって2~3ジョッキー飲んで、それから料理を頼みました。この夜は鶏肉の串焼き。ちょっと少ないようにも見えますが、ビールのアテとしてはよかった。ご飯もついて、シメて3.5ドル。数100円で酔えました。

▲ホテルの朝食
平成24年3月7日 / シェムリアップ
楽しみにしていた市場見学

この日は楽しみにしていた市場をまわる日です。その前に、ホテルで腹ごしらえ。ホテルの朝食はバイキングです。西洋料理もありましたが、ここは現地料理でフォーを食べました…、あれ、フォーってのはベトナムか…。
ま、細かいことは気にせずに、朝からムシャムシャパクパクです。カンボジアの料理って、タイ料理ほど辛くなく、ベトナム料理よりも香草が効いていません。つまり、私たちの口によくあうってわけ。
おや、見慣れないものがある…。日本で言う「奈良漬け」みたいなやつ。食べてみると、奈良漬けというより守口漬けのような味です。

▲プサールーで売ってた「チャイポウ」



▲プサールー(ルー市場)の魚売り場


▲プロホック


▲プオーク


▲プオーク

やって来たポゥキィさんに聞いてみると、これは「チャイポウ」というそうです。「チャイ」はダイコン、「ポウ」は塩。要するにダイコンの漬け物。甘いものと辛いものの2種類あるといいます。この漬け物、常温で1年ほどもつ、といいます。1年が本当かどうかわかりませんが、ともあれチャイポウは、今回の私の数少ないお土産になりました。

市場見学で希望したのは魚です。行ったのはプサールー。シェムリアップで最も大きな市場です。カンボジアでの魚は、大半が淡水魚。カンボジアは海にも面していて、海魚もありますが、鮮魚はトンレサップ湖やメコン川で獲ったものが多いです。小さなイワシくらいの魚から3メートルを超すものまで、生きたまま店先に並べられていました。 これらが、シェムリアップの人々の、今夜のおかずになるんですね。

さて、私はカンボジアのある食べ物に興味がある、と言いました。それは魚なのですが、鮮魚じゃありません。魚醤やナレズシなどの発酵食品、つまりショッツルやフナズシのような食べ物です。そんなのを、7年前来た時に、カンボジアで見たのです。 そのうちのひとつ・魚醤の一種であるものを、ついに発見しました!

と偉そうに書いてますが、実はこの食品、カンボジアのみならず東南アジアでは非常に重要な調味料。日本で言えば醤油や味噌にも相当するもので、どこの店でも売っているものです。
名前は「プラホック」。魚を塩漬けにし、何ヶ月もの間、発酵させておくのです。とても独特のにおいがあるのですが、このにおいがうまさの秘訣! どんな料理にも入っており、あの独特のうまみのもととなっているのです。

ポゥキィさんは足慣れた様子で市場を歩き回り、このプラホックは何の魚から作る、とか、あちらのプラホックは何ヶ月寝かせたものだ、とか、いろいろ聞いてくれました。というより、案外ご自分のご趣味なのかなぁ。私より嬉々として飛び回っています。
プラホックにするのは小さい魚ばかりかと思っていましたが、案外大きな魚も材料になるんですね。それも鱗のない魚、すなわちナマズが好かれるんです。日本じゃ考えられませんけどね。
プラホックを売っているソコムさんの店に立ち寄りました。そこでプラホックの作り方を見学させてほしいというと,快く引き受けてくれました。

また、魚醤ならぬナレズシのことを聞いてみると、それは「プオーク」と呼ぶのだそうです。日本のフナズシのように、塩漬けした魚の腹にご飯を詰め込み、発酵させたもの。これはプラホックのような調味料ではなく、立派な食材なんですね。
見たところプラホックの入ったビンは並んでいるものの、プオークが見当たりません。「プオークは?」と問いかけると、笑って下の箱を指差しました。この箱の中にあるのがプオークでした。
試しに少しもらってみようと箱のふたを開けてもらいますと、たちまちあたりはすごいにおい。日本流に言うと「うわっ! くさい!!」となりそうなところですが、売っている人たちは笑っています。文化とはこうも違うのかと、感心したものです。

さて、市場を出ますと、市場の外でも店があります。ポゥキィさん、曰く。「市場は中の商売権を買わなきゃいけないので高いんだ。でも、中身については安心だよ。市場の外の店は安いんだが、中身は…」。 安心を取るか、値段を取るか、ですね。

広い市場をぐるりと回っていると、だんだん人が少なくなってきます。そう、朝早くから開いている市場は、お昼にもなると閉まるのです。市場に別れを告げて、私たちも昼食を取ろう。
と はいえ、私の頭の中は「お昼=ビール」。あまり料理など食べません。ポゥキィさんにそのことを伝えると、彼はクッキー屋に連れて行ってくれました。その庭 先がビアガーデン風になっているのです。私はクッキーなどには興味がありませんから、店の中には入らず、庭先でさっさとビールを呑み始めました。
しかしながら、店の中からはいいにおい。クッキーの焼けるにおいですかね。そのうちバスが次々と着き、せまい店はたちまちお客さんでいっぱいになってしましました。
もうおわかりですね。そこはMadam Sachikoのお店だったのです。ビール飲みの私も、つい財布のひもが緩んで、お土産が増えたのでした。

▲プラホックを作るソコムさん


▲プラホックのためのプール。手前にはバケツに入った小魚がある
平成24年3月8日(火) / シェムリアップ
 
プロホックづくりを見学

さて午後、先ほどのソコムさんの家に行って、プラホック作りを見せてもらいました。作業場というより「工場」ということばの方がぴったりします。行くとソコムさんはホークを持ってプールに入り、何やら一生懸命かきまぜています。実はソコムさんが入っているプールの中は、みな魚なのです。

魚は、大きいのでも小さいのでも、基本的には同じ作り方で、頭や尻尾、腹、骨を取って、塩漬けします。それを桶や壷の中に入れて約1か月寝かせてから、またプールに広げるのです。そこで魚を再びこね回します。彼女がやっているのはこの作業で、魚をまた樽につけて2~3ヶ月熟成させると、でき上がるのです。魚はトレイコンプリエンやトレイチョーカインといった小魚でした。

夕食は、ホテルの前に大きなスーパーマーケットがあり、その3階に回転ずし屋がありましたので、行ってみました。 見慣れたベルトコンベアーがあり、お皿がまわっていますので、威勢よく「マグロ!」と頼みました。が、店の女の子はポカンとしています。これはいかん、やっぱり英語だな、と思い、「Tuna!」と頼んでみました。
すると店中の店員が出てきて、仕舞いには店長らしき人物まで。彼が言うには「ここはすし屋ではなく鍋物屋だ。すしを出してほしいなら、ちゃんと予約しておかねばならない」とのことでした。それならそれで、すしの絵を描いた看板なんか出すなよ、紛らわしい!
というわけで、この日も昨日と同じ、ナイトマーケットの中のビアホールで済ませました。この日はグリーンカレー。また、500円くらいで酔っぱらいました。

▲プラホックの仕込みをするチャーさん


▲できあがったプオーク料理。左から下方向に、 「スガオポー」「ポーチョムホイ」「ポーチン」 ライム、ナス


▲ご飯と一緒に、ライムも添えて

平成24年3月9日 / シェムリアップ
 
プオーク売りのチャーさん宅へ

この日の朝食もホテルで食べました。なにせフォーの麺が3種類もあるのです。一生懸命食べなきゃ…。 そのうえ、途中の屋台では朝食を取っている人がたくさんいました。けれども、それには目もくれません(というより、ホテルでの朝食が多かった…)。今日は、昨日、市場で知り合ったおばさんに、プオークの料理を作ってもらうのです。

早速プサンルーに行って、露天でプオークを売っているチャーさんに会い、市場のすぐ近くにあるチャーさんの家を訪ねました。チャーさんとそのご主人、娘さんとそのお子さんたちが5人。大家族です。

まずは見学から。トレイクロップやトライプラーなど中くらいの魚を準備し、鱗や頭。内臓も取り去ります。これに塩をまぶして、桶の中に漬けておきます。「いつ頃、食べられますか?」との質問には「塩漬けができ上がるのは1ヶ月くらいよ。でもそのあと、プラホックやプオークにするの。全部で3~4ヶ月ほどかしらねぇ」との返答でありました。
あの臭い…、いや、独特のにおいがあるプオークは、結局、チャーさんが売っているものを買って来て、それを料理してもらいました。

料理は3種類。
まず、「スガオポー」。「スガオ」とは「煮物」のことで、トウガン、ヒョウタン、トマトなどと一緒にスープにするのです。私が食べたのはトレイサンダイという魚のプオークで、砂糖と味の素で味を調えてゆで、その汁をネギとパクチーの入った鉢に移しただけのものでした。
二つ目は砂糖とともに炒める「ポ-チン」。「チン」は「炒め物」という意味です。私が食べたのはトレイプラーという魚のプオークのチンでした。最初は形を保っていたものの、切らずに炒めるものですから、最後には適当な大きさにバラけてしまっておりました。
三つ目は「ポーチョムホイ」。「チョムホイ」とは「蒸し物」で、ご飯を炊く時、炊けたと思ったらプオークを入れておくのです。でき上がったら、キュウリ、ウリ、若いピーマン、バナナの花、ホテイアオイの花などのサラダと一緒に食べるのです。私が食べたのはトレイチプンという魚で、20分ほど温めて食べました。


▲西バライの「焼き鳥屋」。鶏肉だけでなく 魚も焼いている


▲「ビアホール」で見せてくれた、酒びん のジャグリンング

さぁ、できました。たくさんできたけど、みんな一緒に食べるのだからいいっか。おーぃ、みんな、一緒に食べよう! ご飯を皿に盛り、プオーク料理とつけ合わせの野菜、今回の場合だったらナスを置くのがやり方らしい。そして、ご飯も一緒にひと口で食べるのがカンボジアの食べ方だと言う。

ところが家族は私と一緒に食べない。ポゥキィさんに「どういうこと?」と聞くと、「この家は市場で商売をしているでしょ。今日はあなたが来ているから特別だけど、いつもは大人が入れ替わり立ち替わりで店番に行くんだ。一緒に食べるなんて習慣、ないのさ。それにあなたは『お客様』だから、特に子供たちは一緒に食べられないのさ」
私はみんなと和気あいあいに、と思ってたのですが、なかなか難しいようで…。

帰りに、西バライへ寄りました。さすがに乾季です。池の畔は、たくさんの人々でいっぱいでした。私は、泳ぎたくとも水着はないし、やっぱりそこらあたりのお店に行きましょうか。
あたりの店は、「焼き鳥」とでもいうんでしょうか。鶏肉を竹の串に刺して焼いています。あ、魚もありますねぇ。おいしそう。
でも私のお腹は、さっき食べたプオーク料理がしっかり詰まっているのでした。だから、においだけ。残念!

さて、一日の終わりは、やっぱりビール。いつものビアホールです。今日は昨日までとは違い、日本人の男の子がひとり、カウンターで呑んでました。
最初は話しかけるのも失礼かな、と思い(せっかくひとりで外国へ来たのに、ここまで来て日本人としゃべらなきゃいけないなんて、と思う人もいるので)、最初は彼にわからないように呑んでたのですが、そんな私を見て「あなたと同じ日本人が来てるよ。さぁ、あなたの席はここだ!」と話しかけてくれたのはウエイターの青年。彼が帰るまでの時間、互いのカンボジア旅行の話などに花が咲きました。

彼が帰った後、まだ私はビールを注文しました。「いつまでここにいるの?」と聞かれ、明日、タイに帰るんだ」と答えると、「じゃ、特別に」と、いつもは短時間しかやらないジャグリングを、たっぷり時間をかけて見せてくれました。
とてもいい夜でした。

▲ホテルの朝食。右端の小皿が「チャイポウ」


▲名物! アンコールビール


平成24年3月10日(木) / シェムリアップ
シェムリアップ最後の日

シェムリアップの旅も今日までです。寂しいような気もしますが、朝は食べ残したフォーの麺料理。1日めはラーメン、2日めがきしめんでしたから、今日は春雨です。ついでに焼き飯やらお粥やらをさらに盛りつけました。
どのみち、もう、この日はやることがないのです。朝からいっぱい食べました。というか、ほとんど「食べ過ぎ状態」ですね。

シェムリアップ空港へはポゥキィさんが送ってくれました。最後のあいさつをして、別れました。 空港ではチェックインも早めに済み、その分、私のビールタイムは増えました。売店の一角はバーになっています。ここでも「アンコールビール」です。

さて、こうして過ごしたシェムリアップの3泊4日。普通の人なら「少しはやせたかしら」というところでしょうが、私は確実に太りました。
困ったことやなぁ、と言いつつ、シェムリアップ発バンコク行きの飛行機内で出る機内食を、ばくばく食べている私でした。