体験レポート

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メコンデルタの町カントーで生活道をサイクリング探検



メコンデルタの町カントーへ視察に行ったとき、
カントーの町中を散策するサイクリングをツアーのプログラムに盛り込もうということで、
実際に自転車をレンタルして町を走ってみることになりました。
しかし、地方都市とはいえカントーはメコンデルタ最大の都市。
人口が多く、ホーチミンほどではないにしても路上には多くのバイクが走っているため、
ベトナムの交通事情に慣れない人が自転車で走るのは簡単ではありません。




フェリーで屋台を運ぶ女性


サイクリングの様子をビデオで見る
 

そこで急遽予定を変更し、カントーに到着した日から気になっていた川の対岸へ自転車に乗って行ってみることにしました。
小さい住宅や商店がひしめき、町の喧騒から離れた「あちら」には、一体何があるんだろう?
そんなちょっとした好奇心とそれを実現させる行動力がなければ、旅は乾いたものになってしまいます。

レンタサイクル店から、川の対岸に渡るフェリー乗り場までは、クラクションを鳴らしながら行きかうバイクの波にのって、川沿いの道を走っていきます。町の中心部と比べると交通量は少なく、午前の日差しはまだやわらか。すがすがしい風が流れていたこともあって、快適なサイクリングです。

フェリー乗り場に到着。地元の人々が日常的に利用している公共交通機関なので、観光とは離れたカントーの暮らしの一端に触れられました。

     

迷路のような道を走っていく
 

子どもを自転車に乗せた母親らしき女性、すげ笠をかぶり食べ物を盛った籠を手にして行商する女性、カントーの町で買いだしをしてきたのか、大きな荷物をバイクに積んで進む男 性、屋台1台をまるごと運ぶ女性は対岸へ売りに行くのでしょうか…。
メコン川の茶色い流れに浮かぶ白い船体のフェリーは、一定の乗客が集まるとゆっくり動き出し、滔々とした流れに身を任せるかのような速度で対岸に向かいました。

     

対岸の港に着き、フェリーから降りた先には、ベトナム版サザエさんの一コマのような、
その土地の人々にとってはごく当たり前の毎日が広がっていました。
訪問者である私にはかえってそれがとても新鮮で、わくわくするような刺激に満ち溢れ、
この先に広がる風景に対する好奇心がむくむくと膨れ上がっていったのです。

「役者という職業の魅力は、もう一つ別の人生を歩むような体験ができることだ」
知人の役者の言葉を思い出しました。
文字通り、人々の日常生活の中に飛び込むかのような今回の旅の魅力もまた、
一片に過ぎませんが人の人生を垣間見て疑似体験するようなおもしろさがあると思います。

さて、自転車での散策はこれからが本番です。
コンクリートで川岸を固めただけの簡素な港に着き、
肩を寄せ合うように並ぶ住宅や商店に挟まれたメコン川沿いの細い生活道をゆったり走ります。
その道は入り組んではおらず、環状を描くひとつの境界のようでもあり、
訪れる人を奥へ奥へといざなう迷路のようにも感じられました。

視線を先に向けると、散髪屋、八百屋、米屋、日用品屋、カフェ、食堂、
狭い部屋にぎっしりゲーム機を並べた小さなゲームセンター、小学校、寺院など、
日々の暮らしに必要な小さくて濃密な世界の展開が飛び込んできます。
軽快なテンポでペダルをこぎ、その世界に引き寄せられるように分け入って行きました。




曲がり角にあった仏教寺院
 
商店や住宅が並ぶ細い道は生活感にあふれている
     

米や卵、調味料などを売る商店
 
新鮮な野菜が並ぶ小さな市場のような一画は
にぎわっていました
     

野菜や水産物を広げて路上で商いをしている男性は、きっとカントーの水上市場で仕入れてきた食材を並べているのでしょうか。
日本の魚屋ではお目にかかれない淡水の食用魚が並び、その横には熱帯モンスーンならではのさまざまなハーブや野菜が並べられていました。
すぐ近くでは、路上で将棋のようなゲームに興じる男たちの姿があり、近所をぶらつく人々がゲームの展開を冷やかしています。

その生活リズムは、メコンのゆったりとした流れのようで、自転車のスピートともしっくりくる時の動きです。その動きにハイビスカスやブーゲンビリア、ココヤシなどの熱帯植物が彩りを添えています。

 
おしゃべりに花を咲かせていた女性たち
     

日用品を売る店
 
路上に並べられたレモングラス


今回の視察で覚えた「写真を撮ってもいいですか?」というベトナム語の後にカメラを向けると、
照れくさそうな表情があふれ、液晶に映し出された顔を見せると「私も撮って」と
いわんばかりのしぐさがいっぱいになりました。
生活迷路のような道をどんどん進んでいくと、次第に不思議な親しみの感情にとらわれていきました。
それはきっと目の前で営まれている生活との距離が近いためだろうと思います。
初めて来たにもかかわらず、久しぶりに帰省した地元の町のような、そんな錯覚を覚えたのです。
そんな気持ちが、「また遊びに来たい町」の地図にカントーを加えてくれました。
観光地を回っただけではわからない、人々の暮らしぶりに興味がある方には、
とってもおすすめのサイクリングコースです。

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